「夢に見たんですよ、ぼんやりとですけど、この方法を…」 「いいんじゃないか。見方を変えてみても」 昼下がりの、まったりとした時間帯だった。ソニーエナジー・デバイス郡山事業所(福島県郡山市)の1階にある喫煙ルーム。申し合わせたわけではないのに、この日も2人は居合わせる。磁石に鉄粉が引き寄せられるように。 リチウムイオン電池の高出力全般に関するエンジニア、石井武彦はとりとめもなく、前夜にみた夢の話をしていた。 プロジェクトの責任者であり、事業部の部長兼設計課長だった福嶋弦(ゆずる)は自然体で受け入れて、自分なりの意見を返していく。 2人は、紫煙を燻(くゆ)らせている。“タバコ部屋”にいる部外者が見れば、どこか脈絡がなく、何を言い合っているのかはわからない会話だ。が、2人は互いに頭脳をフル回転し合って、会話を続けていたのである。 2007年秋の某日のことだった。この年、郡山事業所では、オリビン型リン酸鉄リチウムを正極材料に使うリチウムイオン電池の開発プロジェクトが、福島をリーダーにスタートを切っていた。 商品化のスケジュールが厳格に決まった案件ではなく、「そろそろ、遊び始めたらどうか」という、当初は“フワッ”とした立ち上がりである。 福嶋は相槌を打ち、若い石井の言葉に反応して、「多分、その辺りに(答は)あるよ」などと返しながらも、思っていた。 「この男は、俺に似ている」と。なぜなら、福島も、取り組んでいる開発のブレークスルーへの道筋を、同じように夢に見出す経験をしてきたからだ。 いま、福島は話す。「石井はかなり専門的な分野をやっていたのですが、石井のレベルについていける技術者はいなかったのです」 一方、石井は喫煙中の会話を通じ、ある思いを抱いていた。
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